困っている当事者の居場所のヒントから紡いだプロジェクト ーワラタネスクエアー

平成から令和に元号が変わる1週間ほど前に、北上市の方がコワーキングスペースもりおかに来て、色々聞きたいことがあるということで問い合わせがありました。

うちはいつでも気軽に待ってますのでいいですよということで返答しまして、問い合わせからしばらくしてお越しいただきまして、ここを始めた経緯とか想いとか取り組んでいることとかを、下手ですけども説明をしたのを覚えています。

それからしばらくしてできたプロジェクトが、ワラタネスクエアという不登校や社会的引きこもりの方が集まるプロジェクトで、その代表の方というのがこの時に問い合わせをして来ていた後藤誠子さんという引きこもり経験のある息子を抱える方でした。

後藤さんから後で話を聞いた時に、ワラタネスクエアという常設の居場所スペースを作ろうと決心したきっかけというのが、このコワーキングスペースもりおかに来て話を聞いた時だったようです。

そこから定期的に不登校や引きこもりのためのスペースを開き、北上市役所や市議会に働きかけたり、不登校問題に取り組む方を呼んで講演会などを開いたり、TVの取材を受けたり出演もしたりと、今となっては私にも欲しいと思える位の行動力を発揮して、不登校や引きこもり問題を取り組む方々からは全国区に知られるプロジェクトとなりました。

そして2021年4月から、北上市の引きこもり支援の協働事業という形で常設のスペースができたようなので、北上市にあるワラタネスクエアさんに行きました。

元々はお店があったスペースをそのまま活用して、リフォームをしないでパーテーションだったり椅子やテーブルを置いたりしている、うちとそんなに変わらないような設備のところという印象でした(正直な話として、設備面についてはマネしてほしくはなかったのはありますが)。

そこにステークホルダーとなっている北上市の職員さんと打ち合わせをしてたり、働きたくても働くことができない同年代くらいの方が数名来ていてスタッフさんと一緒に談笑していたりしていました。

その中には北上市以外の方もいて、遠くは矢巾町からきていた方もいました。本当にゆったりとした時間を立場とか関係なく過ごしているだけなんですが、それぞれの人生に価値のある時間があったと感じました。

『出会いに次ぐ出会い』KHJのピアサポインタビュー動画、限定公開されてるので観てみてね。https://m.youtube.com/watch?ameblo.jp

その訪問の後、笑いのタネプロジェクトは、当事者会や親子茶話会など、不登校や引きこもり問題に関する様々なイベントを開催をしつつ、ワーカーズコープという労働者協同組合という形式で法人化し、自治体からの協力を得やすい体制になりました。

さらに2023年には、活動の様子を映画化されたり、2024年には隣の奥州市にもワラタネスクエアの常設スペースが設置されたり、引きこもりだった後藤さんの息子さんも人前に出て体験を語っていくようになったりと、着実ではありますがプロジェクトは発展しております。

こういう風にコワーキングスペースもりおかを通じて、またきっかけにして、事業やプロジェクトができていく事は、始めた人間として本当に嬉しいです。

ワラタネスクエアがここまで発展できたのは後藤さんの行動力だと思いますが、きっかけになったのはコワーキングスペースもりおかがあったからと話してくれているのは本当にうれしい限りです。

予想し得なかった派生効果 ーたんば生きづらさネットー

さらに、ワラタネスクエアの影響を受けて、兵庫県の丹波市でも株式会社ネクステの事業プロジェクトの一つとして引きこもり支援の居場所プロジェクト(たんば生きづらさネット)が活動をしていることを知りました。巡り巡って、こうしてコワーキングスペースもりおかでの取組が、別な形で身を結んでいるのはさらにうれしいですし驚きました。

Instagramが当初コワーキングスペースから生まれたアプリであることがコワーキングをご存知の方だとよく知られた話ですが、コワーキングスペースもりおかを通じてそのような事例が小さく作れたのは、自分が想像していたコワーキングスペースが地域にある影響をはるかに越していきました。

よく地域活性化を目的としてコワーキングスペースを作ろうとか、地域課題の解決のためにこの課題対策を地域活性化としてやろうという動きは聞きます。ただ、特段スペースのある地域だけ効果が出ればいいやという発想でやっているところが大半だと思うのです。

それでもいいと思うのですが、その地域とは全く関係のないところで影響を及ぼしている事例が出ているというのは、やっている身としてさらにうれしいことだったりします。コワーキングスペースとして目指したいところでもありましたし、こういう地域おこしだってあっていいはずですし。

とはいえ、自分の中では地域の影響力を持ちたくても持てない中で細々とやっていたというのもあるので、コワーキングスペースもりおかがあったからこそ盛岡でコワーキングスペースをやろうと思って始めたということはあるとしても(正直うれしいですが)、他地域にコワーキングスペースもりおかの影響を受けたプロジェクトができることはありえないことだとは思っていました。

だから、引きこもりになりかけてたとか、クラウドファンディングや事業融資を申請しようとしても却下されるとかハンデはありましたけれども、本当に勇気を振り絞って始めてよかったと感じる出来事でした。

おわりに(コンセプトとして)

コワーキングやコワーキングスペースについての文献を検索していると、運営やスタッフサイドの方だとコワーキングスペースの運営やイベント開催や具体的な活動、利用者サイドだと利用に関する体験談の記事とかが大半だなという印象を、国内外関係なく見受ける印象が多くなりました。

そういう傾向も悪くはないのですが、コワーキングを活用してみて、新しい販路を見出したとか新規事業を考えてみた・試してみたとか、何らかの成果を得ることができたことを誰かがしっかりと伝えていかなければ、コワーキングスペースはどういうところで、どのように活用すれば社会に貢献や影響があることを評価してもらえなくなるのではないかという危機感を、長らく関わってきて感じることが増えてきました。

そこで、コワーキングスペースの利用やイベントの参加などを通じて、その人の仕事やプロジェクト、活動にどう影響して成果や社会貢献につながっていったか、記録として残すことができないだろうかというコンセプトで書いていきたいなと考えております。ひとまずは私のわかる範囲ではありますが、お付き合い頂ければ幸いです。

また、コンセプトに賛同して当方に取材をしてほしいという方がおりましたら、ご一報をいただけるとうれしいです。